「ゆくゆくは法務部を持ちたい」とお考えの経営者の方は事業拡大に熱心で伸び盛りの企業に多いように思います。
しかし、現状、法務部を持っているような企業は、上場企業など一部に限られています。また、法律トラブルや法律に基づいた検討事項は、毎日のように発生するものではなく、そのために人員を準備するのは無駄が多いといえます。そのため、中小企業では総務部門または経理部門が法務部門を兼ねていることがほとんどです。
また人員の増加は単なる人件費の増加にとどまらず、厚生年金、健康保険料といった法定福利費の増加につながるため、簡単に人員を増やすことはできません。
経営者の方には、いうまでもないことですが、人を1名増員するとボーナス、法定福利費を合わせると月30万円程度の支出になります。法務部門はいわゆる「お金を生む」部門ではないので、なおさら増員は簡単ではありません。
また、トラブルの解決や予防には、法的知識だけでは足りず、さまざまな紛争を解決してえられた経験も必要になります。しかし、一つの企業に勤務しているだけでは、取り扱う案件数も多くはならず、そのような経験を多数積むにはかなりの年数を必要とします。他方、他社に勤務経験のあるベテラン法務社員を中途採用するには、それなりの賃金が必要になります。
これに対して、弁護士であれば、人員の増加に伴う経費の増加はなく、人を1人雇用した場合の社会保険料程度の費用で随時相談に応じてもらうことが可能です。
また、弁護士は日常的に法的な問題について対応をしており、実際に発生したトラブルの解決にも多数関与しています。そのため、よほどの経験年数の少ない弁護士でない限り、トラブルに対応した経験は一般企業の法務部員より多くなることがあります。
さらに、弁護士は外部の専門家であり、依頼者である会社から離れた地位にあります。そのため、経営陣にとって多少耳の痛いことでも、客観的に指摘することができます。特に、労働トラブルなどでは、経営者と従業員の関係が感情的な対立になっていることが多く、そのような場合、社内からではなかなか経営者に意見を言いにくいことがあります
そこで、社外の客観的な意見を取り入れ、もし方針が誤っていたのであれば、それを軌道修正することが可能になります。
こう考えると、専門の法務部が必要な大企業ではともかく、中小企業では、法務部を作ったり、専門の人材を従業員として雇用したりするより、顧問弁護士を登用し、弁護士に日常的に相談する方が、安価で質の良いサービスを受けられます。