飲食店や小売店に代表される消費者向けの事業を営んでいると、一定程度クレームへの対応が必要となります。
市販のノウハウ本には、「クレーム対応はお客様の声を聴ける宝の山」のようなことを述べているものもありますが、対応する従業員からすれば精神的な負担感が大きく、また、判断の難しい場面もあり、現場を疲弊させる要因になっています。また、クレームの中に は明らかに過大なものも少なくありません。
では、クレーム対応にはどのように臨むのがよいでしょうか。
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1 謝罪はしてもよい
ドラマなどで、「謝罪していることが証拠になる」などと言われることがあり、謝罪に躊躇される方もおられるようです。
しかし、過失(ミス)を認め謝罪することと、賠償義務を負担することは全く別です。
例えば、レストランの店員がスープをお客さんの洋服にこぼしてしまったとしましょう。この場合、店側に「過失」があることは明らかです。洗濯代などの実費は支払う必要があるでしょう。しかし、お客さんが重要な商談に遅れ商機を逃した、というような損害については、よほどのことがない限り支払い義務を負いません。
これを法律用語で「因果関係」といいますが、この例で言えば、過失は認められるが、商機を逃した損害との因果関係がないのです。したがって、過失(ミス)を謝罪したからといって、因果関係のない損害まで賠償しなければならないことはありません。
むしろ、ミスがあるのであれば、きっちり謝罪をするところから、その後のやり取りを始めましょう。
2 過大な請求の場合
もっとも、お客さんによっては、明らかに過大な要求をしてくる方や、「誠意を見せろ」に類するようなことを述べては解決に向かわないかたもしばしばおられます。
金銭目的で意図的に過大な請求をしてくる方には、毅然とした態度を示せば諦められることが多いのですが、時間がかかってしまうのは、適切な要求だと信じて過大な要求をしてくる方です。
このような方は、自分が正当な要求をしているとの誤解があるので、それが満たされないことへの不満を抱きがちです。誤解を解くのは対立した相手方である貴社では難しいため、難航しがちです。
この場合はある程度時間と手間をかけて、謝罪しながら話し合いをしなければならないのですが、会社としてはクレームへの対応の「最終ライン」(いくら賠償金を払うか、とか、どのような代替サービスをするか)を決めて、それを「当社の精一杯です」と明確に伝えることが必要です。そして、それを伝えたら、そこからの譲歩はしないことが大切です。
説得して納得してもらうことが難しい以上、「提案をし、後は、お客さんに和解するかどうかを考えてもらう」というのがお勧めです。
3 弁護士に依頼するメリット
クレーム対応を弁護士に依頼するメリットは、不当請求を法的理論で跳ねのけることができるという点です。
もっとも、なんでもいきなり弁護士対応にすると、先方も態度を硬化させてしまい、まとまる交渉もまとまりませんので、まずは普段から付合いのある弁護士をボクシングのセコンドのようにしてアドバイス受けながら、会社での解決が可能かを試みていただくことをお勧めします。弁護士は賠償額の相場や訴訟をされたときのリスクなど全体を見ながら、相場感、納得感のあるアドバイスが可能です。
もっとも、執拗なクレーム、悪質なクレームについては弁護士が介入し、強く毅然とした態度を示すこともあります。