Archive for the ‘弁護士高山智行の法律コラム’ Category

成人年齢改定と労働法2

2022-04-04

令和4年4月1日により成人年齢が改定されました。

学生アルバイトに代表される18歳以上の労働者は、法律上は親権者から法的には独立した主体となっております。
その結果、例えば本人の就業態度に問題がある場合や職場で労働者間のトラブルが発生した場合も、原則として本人の判断で解決することになり、親は関係がないことになります。

しかし、会社としては若年の労働者のトラブルについては、親御さんに連絡を取って適切な対応を求めたいという場面は少なくありません。例えば欠勤が続いている、辞職したのに制服を返してくれない、などの問題がある場合、従来でしたら親権者に連絡をして解決することも可能でしたが、現行法では親に連絡をとる法的根拠は乏しいことがありえます。むしろ本人のプライバシーの関係から何でも親に連絡し、対応するのが正しいのか、という問題が生じております。

したがって、就業規則に「本人に連絡が取れない場合など、必要な場合は身元保証人や緊急連絡先に連絡し、対応をもとめることができる」という内容を盛り込み、親御さんに連絡し、問題への対応を求めることができるようにしておくのがよいでしょう。

成人年齢改定と労働法1

2022-04-01

令和4年4月1日より成人の年齢が改定され、18歳が成人の年齢になりました。

労働法の分野でいえば、アルバイトの雇用に関して、アルバイトが18歳以上であれば親権者の同意が要らなくなりなした。
また、18歳以上のアルバイトが何か問題を発生させた場合には本人と話し合って合意すれば足りることになり、合意の内容について親が関与することは不要になりました。
このような法改正があると「事情を良く分かっていないアルバイトの親御さんが会社に怒鳴り込んできても、本人が成人なので相手にしないでよい」というアドバイスをよく見かけます。

しかし、私は上記のような対応は片面的で危険であると考えます。

確かに「モンスターペアレント」という言葉に代表されるように、アルバイトの親御さんが不当な要求を会社に行ってくる場合や、反社会的勢力の関係者であることが伺われる場合は、「成人であるご本人との問題なので、、、」といって親とのやりとりを拒むこともありえます。
しかし、実際には18歳、19歳のアルバイトは親の庇護下にあることが多く、学生であるなど、社会経験にも乏しいことから、会社との間で紛争が発生した場合、十分な協議、交渉ができないことがありえます。
相手がもう成人だからといって、アルバイトとの間の問題で、会社強引な交渉を行い、合意に至っても、後日その効果が否定される可能性も低くありません。

そこで、事案に応じて、親の関与を求めるなどを検討するのがよいと思います。また、どのような事案の場合、親の関与を求めるかについては、専門家のアドバイスを求めるのがよいでしょう。

個人情報保護法改正と中小企業

2022-03-30

個人情報保護法の改正
令和4年4月1日より個人情報保護法が改正されます。
今回の改正は比較的大きな改正となっており、個人情報を取り扱う全事業者(事業規模の大小を問いませんので注意が必要です)に対応を迫るものですが、その中でも①公表事項の拡大、②利用者による開示請求の方法、③漏えいの場合の対応については、中小企業(特にECサイトなどを運営しておられる企業の場合)でも対応が必要になりますので、簡単に解説します。

①公表事項の拡大
 まず、「公表事項の拡大」ですが、これまで事業者に公表が求められていた事実に加え「安全管理のために講じた措置」の公表が求められるようになります。具体的には漏えい防止などのために事業者が取っている措置(ウイルス対策ソフトの導入など)を明らかにしておくことが求められます。一般的にはこれらの措置の内容をプライバシーポリシーなどを加筆して明らかにしておけばよいでしょう。

②本人による開示請求の方法
 「利用者による開示請求の方法」ですが、これまでも、事業者が保有している個人情報については本人の開示請求があった場合、開示が必要となっておりました。もっとも、開示の方法は事業者側で定めることが可能で、本人はそれに従うことになっておりました。
 しかし、今回(令和4年4月1日~)の改正では、電磁的記録(メール送信の方法など)、書面、または事業者の定める方法のいずれかを本人が選べるようになりました。

③漏えいの場合の対応
 個人情報が漏えいしてしまった場合、従来では個人情報保護委員会への報告が努力義務とされていました。しかし、今回の改正で、個人の権利利益を害するおそれが大きい、漏えい等の事態が発生した場合等に、個人情報保護委員会への報告及び本人への通知が義務化されました。
 本人への通知は、すなわち本人からの問い合わせを誘発するものですから、企業にとっては大きな負担となります。中小企業の取り扱う個人情報で「個人の権利利益を害するおそれが大きい、漏えい等の事態」が発生するかは微妙なことがありますが、注意が必要です。

パワハラ防止法適用へ

2022-03-16

2022年4月1日から、中小企業へもパワハラ防止法が適用されます。
同法律は「労働施策総合推進法」という名称ですが、社会的にはパワハラ防止法として認識されている様子です。
どのような行為がパワハラになるのかなどについて指針が示されていますが、実際にパワハラかどうかの判断は微妙な場合が多いのです。
暴力や侮辱といった典型的な場面はもちろんパワハラに該当するので判断に迷うことはありません。また、仮にパワハラの有無が問題となった場合でも、最近ではスマートフォンを使った録音などがよく行われており、音声データが決定的な証拠になることも少なくありません。
しかし、たとえば「頻繁にため息をつかれる」「聞こえるか聞こえないかの声で独り言のように文句をいわれる」といった行為で即座にパワハラを認定することは容易ではありません。また、このような小さなハラスメントは逐一問題視されにくく、長期化、潜在化しがちです。
さらに、こういった場面では、パワハラを訴えた従業員とパワハラをしたとされる上司の言い分が食い違い、問題提起がなされたこと自体が禍根となり、職場環境全体が悪化することもあります。
そこで、経営者には小さなハラスメントも行わない、見逃さない姿勢が大切になってくると思われます。また、ハラスメント予防の方法として、研修、就業規則への明記と周知、内部通報制度などの方法が考えられます。
新しい法律の施行を機に、弁護士など専門家へのご相談をお勧めします。

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