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1 いつから顧問契約をするのがいいか?
「いつから顧問弁護士を頼むべきか?」というご質問をよくいただきます。私のお勧めは、「事業を拡大したいとき」です。
労働事件を例にとれば、一番労働事件が起こりやすいのは会社が成長し、規模が大きくなった直後です。会社の規模が大きくなると、従業員数もいきなり増加します。それまでは社長や社長の右腕と言われるような方が丁寧に採用をし、教育もしっかり行っていたのに、会社の規模が大きくなると従業員全体に目が届きません。また従業員の人数が増えるとミスマッチの確率があがるのは当然といえます。
さらに、急に会社の規模が急に大きくなったため、「法務面のチェックが追い付かない」、「就業規則が未作成」といった会社側に「穴」がある場合も多く、労働事件が起きやすい環境といえます。
労働事件に限らなくとも、事業拡大時には取引先の増加、新しいシステムの導入など、様々な契約関係が増加し、法的トラブルが起こりやすい傾向にあります。さらに、事業拡大により新事業に乗り出す場合は、それまで会社で培ってきたノウハウや商習慣が新事業で通用せず、トラブルになってしまうことがあります。
よく、顧問契約をしてくださった経営者の方から「先生と顧問契約をしたら不思議とトラブルが増えたわ」とこぼされることがありますが、実は勘のいい経営者の方が、トラブルの増加を見越して顧問契約をしていただいているように思います。
2 顧問弁護士は何をしてくれるのか?
(1)オーダーメイドの解決
会社には社風があります。特に、中小企業は経営者と従業員の距離が近く、採用も経営者が行うことが多いため、会社の社風が色濃く表れます。同じトラブルに直面しても、会社によって対応は様々です。例えば、これまで功績の大きかった従業員が社内トラブルを起こしたとき、その従業員にどのように対応するか、という問題などでは、会社の考え方が色濃く表れます。
顧問弁護士は普段の相談を通じ、また経営者の考えを普段からお聞きし、社風に合ったオーダーメイドの解決を目指すことができます。
これは突然法律相談に訪れた弁護士には難しいことだと思います。
(2)経営者の常識と裁判官の常識の差を埋める
弁護士は法律の専門職であるとともに、トラブル解決、トラブル予防の専門職でもあります。特に顧問弁護士は、契約書のチェックや日常の法律相談を通じて会社に起こりうるトラブルを予防してゆきます。
法律相談などという堅苦しいイメージをお持ちかもしれませんが、顧問弁護士を上手に使う経営者の方は、顧問弁護士に気軽に電話をかけて「もし知っていたら、教えて」とか「感覚的にどう思う?」といった簡単で素朴な疑問についてもアドバイスを求めておられます。
また、法律や裁判官の判決は一般的な経営の感覚や社会の感覚とは大きくずれることがあり、契約の締結や解消といった法的な判断を伴う場面での相談は、経営者の常識と裁判所の常識のギャップを埋めるリスク回避の方法として非常に有効です。
(3)弁護士費用
日本の多くの弁護士は、以前日弁連が定めていた弁護士報酬基準(日弁連基準)を自らの弁護士費用の基準として採用しています。日弁連基準に従うと、例えば500万円の債権の回収を依頼し、回収できた場合、着手金は34万円、報酬金は78万円(いずれも税別)になります。
初めて事件を担当する依頼者の場合、事件の難易度や、難しい依頼者であるかどうかなどがわかりにくいため、弁護士費用は日弁連基準に従って定められることがほとんどで、弁護士費用がディスカウントされることはあまりありません。
しかし、顧問契約を締結していただいている場合、着手金・報酬金について、率直にお話しいただき相談に応じさせていただくことは可能です。また、私の顧問契約では、顧問契約締結時に最低10%は弁護士費用を割り引くことが契約内容に盛り込まれています。
さらに、顧問弁護士は、会社内に法務部の人材を確保し、毎月の賃金を負担するのに比べて、法律的な分野について専門性のある弁護士にアウトソーシングしてしまうことが、費用面でも有利です。