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1 必ず対応しなければなりません
訴訟が提起されると、裁判所の封筒で、会社に訴状が届きます。配達方法も、郵便局員が会社におられる方に直接手渡しする「特別送達」という方法がとられます(なお、裁判所の封筒でない、郵便局員の手渡しの配達でない、といった場合は、訴状が入っていても架空請求の可能性がありますので、ご注意ください。)。
訴訟が起こされ、被告になってしまった場合、それがどんなに滅茶苦茶な訴訟でも、対応をしなくてはなりません。
なぜなら「欠席判決」という言葉もあるように、日本の裁判は、何も対応せずに第1回期日を欠席すると、原告の主張を認めたものとされてしまい、敗訴判決が下されてしまうからです。
2 訴訟になった場合の手間
また、労働訴訟となると、労働者側も弁護士を代理人としていることが多いため、訴状にはそれ相応の法律構成が記載されていて、証拠も添付されていることがほとんどです。したがって、これらへの会社側の対応の手間は相当のものになります。
さらに、現在、労働審判という和解向きの手続が備えられているにもかかわらず、労働者側が労働訴訟を起こしてきたということにも注目すべきでしょう。
訴訟を起こしてくるというのは、「労働審判のような和解を視野においた手続をしない」という労働者側の強い意思の表れであることもありますので、判決で白黒をつけることも意識した厳しい紛争が予想されます。
そこで、労働訴訟が提起された場合、会社側は事例を正確に把握し、過去の判例に照らして、自社の有利不利を十分に検討して訴訟に臨む必要があります。
こういった事例の検討は労働審判や弁護士間での交渉事件でも行われるものですが、労働訴訟は他の手続に比べて、和解の可能性が低く、判決になる可能性がある以上、厳密に行う必要があります。
また、労働訴訟は戦後間もないころから今日まで多数の件数が取り扱われてきており、判例も多岐に及んでいます。そのため、会社側と労働者側がそれぞれ自分に有利な判例を出し合って、どちらの判例が今回の労働訴訟の事例に近いかを主張しあうこともよくあります。
したがって、日本の訴訟法上、裁判で弁護士を使うかどうかは任意とされていますが、争点のあるような労働訴訟では弁護士を使わずに対応することは極めて難しいといえるでしょう。
また、労働訴訟の場合、証人尋問が行われることもよくあり、その準備にかなりの時間と手間がかかることも意識しておきましょう。
3 タイムスケジュール
労働訴訟で会社側は被告になることが多いので、訴訟が起こされたことは、訴状が会社に送達されて知ります。訴状には呼出状が同封されていて、概ね1か月強先の裁判期日が指定されています。
そこから、原告、被告が月に1回ペースで主張、反論を重ね、早い事件で第1回の期日から半年ほどで、争点の整理が終わります。
争点の整理が終わると、証人尋問の準備に入り、そこから約2か月後に証人尋問がなされます。
証人尋問が終わったら、3か月程度で判決が下されます。
すなわち、労働訴訟は早くて1年ほどで第一審の判決まで進みます。
4 和解で終了することも
「労働訴訟は他の手続と比べて和解で終わる可能性が低い」と申しましたが、それでも裁判所は会社側、労働者側双方に、和解での解決を勧めてきます。和解は上述の争点整理の終わったタイミングや証人尋問の終わったタイミングに勧められます。
また、労働訴訟は他の訴訟に比べて和解で終わることが多いように思います。
訴訟でお互いに主張を尽くし、過去の判例と実際の事例を比較してゆくと、裁判所からもどちらが有利不利がある程度判明してきます。
そこで、裁判所の心証に従った和解をすることもよくありますので、担当している弁護士とよく打ち合わせをして、解決を目指すのがよいでしょう。