1 問題を事前に防止するための相談
労働問題といっても、解雇、残業代、パワハラ、異動と様々です。解雇無効を争う訴訟を数年かけて行うような事案もありますが、労働問題の多くは、裁判になじみにくい事案の方が多いのです。
例えば、パワハラ気味の上司の処遇と部下のフォローといった微妙なバランスを求められる事案は、裁判などの手続になったこと自体、「揉めた」印象を社内に発生させ、適切でないことがあります。
また、就業規則の改定などは、問題になるかどうかも分かりません。問題があるかのような対応をするのは、従業員から要らぬ誤解を招きかねません。
さらに、残業代請求などの案件は他の商事案件に比べて請求が少額であることも多いわりに、争点が多岐にわたることがあり、スポットの契約で弁護士に依頼するとなれば、請求額との対比では弁護士費用がかかりがちです。
そこで、日常的に弁護士に労働問題の相談を行うことで、まずは労働問題を事前に防ぐことが合理的です。
2 問題が起こってからの相談
労働問題が起こってからも、従業員が弁護士をつけていないのであれば、会社側も直ちには弁護士をつけず、当事者同士で話し合って、解決を目指すべきです。そうすることで労働者、会社側双方とも弁護士費用の負担が軽く済む分、金銭解決の余裕が生じやすいからです。
また、労働問題が発生した後、会社自らが交渉する場合でも、日常的にやりとりしている顧問弁護士に、随時相談することのメリットは小さくありません。
例えば、会社の主張との従業員の主張のいずれが裁判になった場合認められやすいのかは裁判の経験、判例の知識がある弁護士に相談するのが確実です。
また、裁判で和解するときの相場が分かれば、裁判の前に和解する場合の参考にもなります。
このように、具体的な労働問題が起こってからも、裁判になったときの敗訴のリスク、和解金の相場などを弁護士に相談しながら上手く事案を解決するのが得策です。
また、このような紛争解決に向けた継続的な相談をスポットの契約で弁護士に依頼するのは難しく、仮に依頼できたとしても経験値の高い弁護士なら1時間3万円程度のタイムチャージになる場合が多いため、結局、費用が高くかかったということもよくあります。そこで、弁護士と顧問契約を締結し、顧問料の範囲内またはタイムチャージの単価を減額して相談に乗ってもらう方が経済的です。