労働審判を起こされた方へ

1 労働審判の特徴

労働審判を起こされた

労働審判の呼出状は裁判所から送られてきます。呼出状には、第一回の労働審判の期日が記載されており、こちらの予定などは聞いてくれておらず「一方的だ」と思われる方いらっしゃるでしょう。

しかし、この第1回期日の設定に不服があっても、原則これを変更することはできません。

また、労働審判では、第1回の期日が開催される前に、労働者と会社の間の争点について、それぞれ十分説明を尽くしておくことが求められています。関係する証拠も予め提出することが求められています。

そのため、労働審判を起こされた側(主として企業側)は、申立書に対して十分な反論を行い、証拠も整理して提出しなければならず、非常にタイトなスケジュールを強いられます。

また、第1回の期日の時点で、裁判所が暫定的な心証を持っていることが多く、この心証に基づいた調停(和解交渉)が勧められる傾向にあり、十分反論ができていないまま裁判所に不利な心証を持たれ、不利な和解を勧められることが懸念されます。

したがって、労働審判を起こされた場合は、通常の訴訟の場合よりいっそう速やかに弁護士に相談され、対応を協議するべきです。労働審判は、他の手続きに比べて弁護士に依頼する必要性が高い案件であるといえます。

もっとも、労働審判での解決にはメリットもあります。労働審判の多くは和解で終わり、かつ通常の訴訟に比べて短期間で事件が解決している点がメリットとしてあげられます。

特に、労働審判の和解においては、裁判官も心証が暫定的であることから、一方当事者に極端に有利な和解案を提示してこず、「足して二で割る」解決を提案してくることがよくあります。別のところでも述べますが、労働事件で会社が有利な事案は非常に少ないことを考えると、労働審判の和解は、訴訟での解決に比べて、会社側に優しいように思います。

また、労働審判は、期日は3回までとされ、おおむね3か月以内に解決がなされます。初めの準備は大変ですが、長々と裁判を抱え、半年、一年と社長や担当者が対応に追われることを考えれば、早期に解決して本業に注力できるメリットもあります。

ただ、和解についての迅速な意思決定を求められることから、労働審判では、弁護士だけで出席するのではなく、会社の代表者などしかるべき地位の方が出席することが望まれます(当事者の出席がないと、裁判所に消極的な印象を与えますので、弁護士だけの出席はお勧めしておりません)。

2 手続きの流れ

労働審判手続は、裁判官1名と労働審判員2名で組織する労働審判委員会が行います。この労働審判員は労働者側と使用者側それぞれの種々の団体から選ばれているようです。

労働審判は1回目の手続までに各種主張を提出しているのですが、一回目の期日ではこれに加えて、主張や証拠の説明を補足します。

労働審判の申立は、申立てる側にも、話し合いによる和解の余地があることを前提としています。そこで、裁判所は労働者側と会社側から個別に話を聞き、話し合いによる解決が検討できるのであれば、どのような解決を希望するのかを聞き取ります。

そして、労働者側、会社側双方の差が小さいのであれば、相互に譲歩を求めるなどして、合意に至れば、調停(和解)を成立させます。

他方、労働者側、会社側の希望する解決内容に差が大きく、その差が埋めがたいとき、裁判所は「労働審判」を行います。これは判決に類似したところのある裁判所の決定です。この審判の特徴的なところは紛争の実情にあった柔軟な決定を出せるところです。

例えば、解雇無効を争っている事件で、裁判所が解雇無効の心証を持った場合、通常訴訟の判決だと「会社に戻せ」という内容の判決になりますが、会社と紛争になった労働者を会社に戻すのは必ずしも紛争の解決にはなりません。そこで、労働審判の場合では「会社は○○円を支払え」という内容の審判を行い、解決を促すことがあります。

この審判(決定)に不服のある場合、2週間以内に異議を申し立てれば、手続は通常訴訟に移行し、裁判官による普通の労働訴訟として手続が始まります。

3 弁護士の利用について

労働審判は、弁護士を使わずに対応することも法律上は可能ですが、かなりタイトなスケジュールで、適切な主張と証拠の提出を求められるという特徴があるため、他の事件より弁護士に依頼することが望ましい事件です。

裁判所は普段、弁護士への依頼を強くは勧めないのですが、労働審判についてはホームページで弁護士への依頼を勧めています。

なお、弁護士費用は着手金30万円~50万円、成功報酬は、解決することを成功として30万円~50万円とさせていただいております。顧問契約締結による割引もございますのでお問い合わせください。

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