社会保険労務士(以下「社労士」といいます)の先生方も労務の専門家ですが、弁護士とはかなり守備範囲が異なります。
社労士の先生方は、雇用保険、更生年金、健康保険といった人を雇用する場合に必要な手続の問題に対応していることが多いように思います。
人を雇用するときの保険加入、辞めるときの離職票の作成などを社労士の先生に頼んでおられる方は多く見かけます。
また、大阪市や神戸市といった都市部は従業員数が多く、人の出入りが多い場合は、社労士と顧問契約を結んで、これらの手続きに随時対応してもらえるのは大きなメリットです。
東大阪市、八尾市などに代表される製造業の盛んな地域では総務部門の人員の比率を下げて利益を確保している部分があるので、この手の手続を社労士にアウトソーシングするのは合理的な場面が多々あります。
他方、従業員数が少ない場合は、この種の手続きを会計事務所に手伝ってもらっていることもあるように思います。
これに対して弁護士は、労働問題においては、従業員との関係を取り扱う専門家です。どのような約束でもって従業員を雇うのか(労働条件、就業規則の問題)、また、従業員が問題を起こした場合、どのように解決するのか(解雇、不祥事の問題)などを主として取り扱います。
また、紛争が起こったとき、紛争の最終決戦地である裁判になった場合、会社の代理人として会社の見解を裁判所に主張できるというのが大きな違いです。裁判で代理人ができるということは、「裁判になるとどうなるか」から逆算し、紛争の解決にあたることができるという大きな違いを生んでいます。
もちろん、社労士の先生方の中にも、労働法、労使トラブルに精通しておられ経験豊富な方、判例についての理解が深い方もおられます。
ただ、「裁判になるとどうなるか」というのは裁判所の出す判決、和解案だけではありません。裁判にかかる手間、裁判で被告になっているストレス、反対に訴えてきた労働者側の裁判での手間、支払ったであろう弁護士費用なども「裁判になるとどうなるか」を検討する上での重大な要素です。
そのような裁判での労使双方の手間、費用なども考え、ベストな紛争解決を検討できるのが弁護士の強みです。私も尊敬している大阪の社労士さんから、たまに労働事件を紹介していただいておりますが、やはり裁判も見越した紛争の全体的な解決が必要な場面でご紹介いただいているように思います。
また、顧問弁護士であれば、労働問題だけではなく、契約書チェック、債権回収、クレーム対応など他の法律問題全般についてご相談いただけるのも強みと言えます。